トリガーポイント鍼灸治療

トリガーポイントとは

トリガーポイントとは、「引き金」という意味のトリガーと「点」という意味のポイントから成る言葉で、痛みの引き金になる点という意味です。

トリガーポイントの歴史

トリガーポイントを初めて提唱したのは、アメリカの医師のジャネット・トラベルです。トラベル医師はJFケネディー元大統領の主治医として有名な方です。
その後、全世界で研究が行われています。
日本では「黒岩 共一教授」がトリガーポイント研究の権威と言われています。

痛みの分類

現代医学では痛みを大きく3つに分類しています。

1.侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛とは、怪我や火傷をした時の痛みです。怪我をするとその部分に炎症が起こり、痛みを起こす物質が集まってきます。
この発痛物質が、侵害受容器というセンサーを刺激することで痛みが発症するため、「侵害受容性疼痛」とよばれます。
この痛みのほとんどは急性の痛みである場合が多く、肉離れ、ぎっくり腰、打撲、切り傷、などがあります。

2.神経障害性疼痛

何らかの原因で神経が障害され、それに伴って起こる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。
末梢神経が障害されると、痛み、しびれ、知覚異常、筋力低下、筋委縮等の症状が出ます。
頸椎症性神経根症、根性坐骨神経痛、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛などがあります。

3.心因性疼痛

不安やストレスが原因となって、傷や炎症、神経の障害が無いのに痛みを感じている状態です。
これは「気持ちの問題」、「痛がり」ということではありません。現代医学的に不安やストレスにより痛みを感じやすくなったり、実際に痛みを感じたりすることが明らかになっています。

 

現代医学では、痛みの原因は上記の3つということになっています。
しかし、上記3つでは説明がつかない痛みが存在していることも事実です。
そのような痛みを、現代医学では「原因不明の痛み=精神的問題」ということで処理してきましたし、またそう考えるしかありませんでした。
そこで、黒岩教授は筋肉の痛みという観点から、4つ目の痛みの原因を提唱しました。
それは「機械受容性疼痛」というものです。

機械受容性疼痛

機械受容性疼痛とは、筋肉や靭帯に存在する機械受容器が過敏化され、機械刺激(筋肉を動かす刺激)、虚血産物等により引き起こされる痛みのことです。
上記の①~③までの痛みとは違い、炎症も起こっていない、神経の痛みでもない、心因性の痛みでもないものです。
西洋医学ではトリガーポイントはおろか、筋肉の痛みを取りあげることはあまりありません。
西洋医学において、筋肉は運動を行う運動器官としての役割は重視されていますが、痛みを感じる器官としての役割は軽視されています。
また、筋肉の痛みや、トリガーポイントの痛みはレントゲンやMRIで異常が観察されないため、筋肉の痛みは原因不明の痛みであり「精神的問題」とされてきました。しかし、これら原因不明の慢性痛を機械受容性疼痛という概念で観察すると説明がつくのです。

皮膚表面の痛みと筋肉の痛みの違い

皮膚表面の痛みと、筋肉の痛みの感じ方は異なります。
皮膚を「切った」時に、どこが痛いかは、出血していたり、切り傷があるなど視覚でも確認可能なので一目瞭然だと思います。また「とげ」が刺さった時も、視覚で確認出来ないような小さなものでも、どこに刺さったか分かると思います。そして虫眼鏡等を使って視覚で確認し、痛みの場所が特定できると思います。
一方、筋肉の痛みは体の内部での痛みなので、視覚では確認出来ません。
肩こりや腰痛、五十肩等の方は、どこが痛いのか分からないという経験をされた方が多いと思います。だいたいここが痛いということは分かっても、点で痛みの場所を示せる方はほとんど存在しません。
これこそが筋肉の痛みの特徴なのです。
皮膚表面は外界と常に接しているため、痛覚受容器という痛みを感じるセンサーが多く、筋肉は皮膚と比べるとセンサーが極端に少なくなります。また、筋肉の痛みは体内部の痛みなので視覚で確認することが出来ません。そのためどこが痛いのかが分からないのです。

トリガーポイントと関連痛

関連痛とは、本来の痛みの原因となっている部位と違う部位に痛みを感じるという脳の錯覚です。研究結果によると、7割の確率で痛みを感じている場所と痛みの発生源はずれていました。
これは、筋肉を専門としている治療家の間では常識ですが、まだまだ知られていないのが実情です。
また、関連痛はトリガーポイントに限ったことでは無く、視覚で確認出来ない体内部の痛みは関連痛を起こします。たとえば、心臓の痛みが肩から上肢に感じる、腎結石の痛みを腰痛と感じるというものです。
このようなことから痛く感じている場所をただマッサージしても、痛みが取れないということがお分かりいただけると思います。

×    :トリガーポイント(痛みの発生源)
赤い部分:痛みを感じる部分(関連痛が起こる部分)

トリガーポイントを刺激した時の症状

トリガーポイントを刺激すると、副交感神経の活動が亢進します。
副交感神経の活動が亢進すると、唾液の分泌、鼻づまり、お腹がなる、眠気、などの症状が出ます。

トリガーポイントが発症しやすい部位

トリガーポイントは異種構造の接合部や、筋肉の縁の部分に形成されやすいという特徴があります。
これは、筋肉と骨、筋肉と靭帯、腱と骨、筋肉の辺縁部のことです。

赤い丸の部分にトリガーポイントがよく形成されます。

責任トリガーポイントとは

トリガーポイントはいろいろな筋肉に起こります。また、1つの筋肉に何か所か起こる場合があります。責任トリガーポイントとは、この中の真の痛みの原因になっている部分のことです。
この責任トリガーポイントを探し、治療を行うと痛みを取ることが出来ます。

責任トリガーポイントの探し方

トリガーポイントは関節を動かす(筋肉を収縮させる)ことで探すことが出来ます。
痛みを感じている部分は勿論、その部分に関連痛が起こりやすい部位などを動かし、疼痛が増悪する動作を確認します。
そして、その動きに関わる筋肉の中から、トリガーポイントが形成されやすい部位も参考に検出します。
見つかったトリガーポイントを刺激して、発生源認知(普段感じている痛みと同じ)が起こったら、その部位が痛みの真の原因となっている責任トリガーポイントということです。

発生源認知とは

責任トリガーポイントを刺激すると、発生源認知が生じます。
発生源認知とは、痛みの発生源であると脳が認識する状態です。
例えば、口内炎の方が舌を使いどこが痛いのかを探し、口内炎の出来ている所を探し当てると「そこっ」と分かる状態です。また、背中がかゆく他人にかいてもらう時に「もうちょっと横」と言って、かゆみの原因となっている部分を触れば「そこっ」という感覚が生じます。
これは、痛み自体は脳が感じているがどこが痛いかは分からなかったものが、痛みの発生源を刺激すると痛み刺激が増幅されるため、脳はその部分が痛みの発生源であると認識出来るということです。
これと同じように、責任トリガーポイントを刺激すると「そこっ」という感覚が生じ、その部分が痛みの発生源であると認識出来ます。そして痛いけど気持ちの良い、痛みが治りそうな感覚が生じます。

トリガーポイント治療の適応症状

肩こり、五十肩、肘痛、腱鞘炎、腰痛、股関節痛、膝痛、足痛 など
運動器の痛みは全てトリガーポイント治療の適応となります。
それ以外は、頭痛、めまい、自律神経失調状態なども治療の適応となります。

当院のトリガーポイント治療の一例(①坐骨神経痛)

坐骨神経痛とは

腰椎から出た坐骨神経はお尻を通り大腿後面を下がり、ふくらはぎを通り足に分布します。この神経の通り道が痛むのが坐骨神経痛です。
坐骨神経痛は病名ではなく、「腹痛」などと同じように症状名にすぎません。ですので、腹痛にもいろいろな原因があるように、坐骨神経痛にもいろいろな原因があります。

黄色の部分が坐骨神経です。

坐骨神経痛の原因疾患

①腰椎部分で神経が障害され坐骨神経痛を起こす疾患
腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、側弯症 etc.
②坐骨神経の通り道である殿部で神経が圧迫を受け、坐骨神経痛を起こす疾患
梨状筋症候群 etc.
上記以外にも坐骨神経痛が起こる原因は多彩です。

ここで大切になってくるのが、今悩まされている足の症状が上記のような真の坐骨神経痛によるものなのか、そうでないのかという見極めです。神経が障害されると「知覚異常」「しびれ」「筋力低下」「反射の異常」などが出てきます。

しびれ

しびれという言葉は、人によって使い方が違います。ここで言うしびれとは正座をした後のような感覚のことです。電気が走る状態もしびれです。

筋力低下

脳からの信号が神経を通して筋肉に伝えられます。この神経が障害されると筋に「動け」という指令を出しても、筋が十分に働かず筋力低下が起こります。

反射の異常

膝や足を三角のゴムが付いた打鍵槌と言われる物で叩くと膝が「ビクッと」動く検査です。神経の働きが悪い場合にこの反射が低下します。

上記の症状が当てはまる方は、神経が腰やお尻等で障害を受けている真の坐骨神経痛といえます。
この様な症状は治療に長期間かかる場合が多いですが、ほとんどの方が保存療法(手術をしない治療)で治癒します。

坐骨神経痛の手術適応について

①足のしびれ(腰の痛み)が長期間続き、日常生活に重度の支障をきたす場合
②足の筋肉の萎縮が重度に認められる、また急速に進行して行く場合
③会陰部・肛門部にしびれが起こったり、尿失禁等の膀胱直腸障害が起こっている場合
このような場合は手術を勧められる場合が多いので、ご自身で対処せずにお早めに医療機関を受診されることをお勧めいたします。

偽の坐骨神経痛(坐骨神経痛様)の症状とは

坐骨神経痛様の症状(偽の坐骨神経痛)とは、「知覚異常」「しびれ」「筋力低下」「反射の異常」などのような神経症状が無く、殿部~下肢が重だるく痛むといったものです。
当院にも、坐骨神経痛様の症状を訴える患者様が数多く来院されます。
しかし、上記のような検査が陽性で、神経が障害されたために起こっている
と思われる真の坐骨神経痛の患者様は少数しかおられません。大半の方は、知覚や筋力、反射に問題はないが、殿部~足が痛い・重だるいと訴えられる方です。

偽の坐骨神経痛(坐骨神経痛様)の症状の原因とは

このような「坐骨神経痛様」の症状には、トリガーポイントが関与しています。
これがどう関わっているかというと、殿部の筋にトリガーポイントが形成されると、その痛みを脳は足が痛いと認識してしまい、足に関連痛を感じるようになります。
坐骨神経痛様の症状が足にあっても症状を感じている足には問題が無く、殿部のトリガーポイントを治療しない限り足の症状は治まりません。

当院のトリガーポイント治療法

このようなトリガーポイント由来の坐骨神経痛にお困りの方は、治療を行うことでほとんどが改善します。
坐骨神経痛様の症状がある方は
小殿筋、中臀筋、梨状筋、小外旋筋群、大腿方形筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、前脛骨筋、長母趾伸筋などのトリガーポイントが発痛している場合が多く、この筋肉に対してトリガーポイントマッサージ、トリガーポイント鍼治療を行って行くことで症状が改善します。

当院のトリガーポイント治療の一例(②めまい)

めまいのタイプ

めまいは大きく2つのタイプに分けられます。
①自分自身がグルグル回っているように感じる「回転性めまい」です。水平方向に回転しているように感じる場合が大半です。
②フラフラする、フワフワするように感じる「非回転性めまい」です。

このどちらのめまいであっても、同時に吐き気、嘔吐を伴うことも少なくありません。吐き気、嘔吐はめまいにつきものの症状です。

めまいの起こるメカニズム

人は自分の姿勢、位置を以下の感覚で認識しています。
耳:内耳の三半規管や耳石器からの情報(耳の三半規管が平衡感覚を司っています)
目:目からの視覚情報
筋・関節:筋・各関節からの固有感覚(筋や関節がどれだけ伸張されたかという感覚)

これらの感覚器はそれぞれが得た情報を脳の平衡中枢に伝えることで、人は自分の頭や体の位置、姿勢等を認識しています。めまいは、それぞれの各器官から送られてくる情報が一致していないときに起こります。
例えば、耳に異常がある場合に、横に振り向いたとします。
このとき、目からの視覚情報、頚部の筋からの固有感覚情報からは横に振り向いたという正常な情報が脳に伝えられますが、耳(三半規管)からは横は振り向いていない、又は大きく振り向いたという異常な情報が脳に伝えられます。このとき脳は異なった情報を処理できずに、結果としてグルグル回転したかのように認識してしまいます。このそれぞれの器官からの情報の不一致が、めまいの原因であると最近では考えられています。

めまいの間違った解釈

①耳(平衡感覚) ②目(視覚) ③筋・関節(固有感覚)とこれらの情報を統合する④脳に異常がある場合も勿論めまいが生じます。
本来は上記の4つ全てにめまいを起こす可能性があるはずなのに、「めまい」=「耳」とされてしまい、現在でも耳の治療が主体となっています。
めまいの代名詞である「メニエール氏病」のように耳に異常がある方は耳鼻科等での投薬により改善しますが、脳・視覚・固有感覚が原因でめまいが起こっている場合は改善が見込めません。

メニエール氏病とは

メニエール氏病の由来とは、1861年フランスの内科医メニエールが、めまいを患っていた少女の遺体を解剖し、「内耳に異常があった」と発表したことで、「めまいは耳から」とするメニエールの説が、近年までの医療界に定着したのです。
メニエール氏病の原因は内リンパ水腫(水膨れ)が起こるためです。内耳内のリンパ液の吸収能力が低下する、あるいは過剰に分泌されると、リンパ水腫(水膨れ)が出来てしまい、内耳の神経を圧迫し、症状を引き起こします。
しかし、何故水腫が起こるのかは現在も原因不明です。

メニエール氏病の症状

典型的なメニエール氏病の症状は
①何のきっかけも無く起こる激しいぐるぐる回る(回転性)めまい
②回転性のめまいが30分~数時間続く
③めまいと同時に難聴、耳鳴、耳閉感が起こり、めまいと一致して悪化したり改善したりする。
メニエール氏病には、厳密な診断基準があり、それを満たす場合にメニエール氏病と診断されます。
30歳代後半~40歳代前半に多く人口10万人当たり30人ほどの割合で発症します。

検査をしたが異常なしと診断されるめまいの真の原因とは

耳鼻科(平衡覚)、脳外科(脳の平衡中枢)に異常が無いとなれば、残された可能性は、理論的には「視覚」の異常、「固有感覚」の異常ということになります。
しかし、実際には視覚の異常でめまいを起こしている方は皆無なので、特に「固有感覚」の異常がめまいには大きく関係していると考えられます。

固有感覚とはどんな感覚のことか

固有感覚とは「筋がどれだけ引き伸ばされたか」という感覚です。

固有感覚の異常がなぜ起こるのか

特にめまいと関係が深いのは頚部・頭部のトリガーポイントです。
頚部・頭部の筋肉にトリガーポイントが形成されると、筋肉の伸び縮みを感じ取る「筋紡錘」というセンサーの働きが過敏化します。これが、固有感覚の異常の原因となっています。

固有感覚の異常とめまいの関係

頚部の筋に固有感覚の異常がある状態では、首を少し動かしただけなのに、筋肉が大きく引き伸ばされたという誤った信号が脳に伝えられます。
結果として脳は大きく首が動いたと認識してしまい、他の感覚器からの信号と矛盾が生じ、めまいが起こります。

当院でのめまい治療の適応症

当院では固有感覚の異常に対して治療を行います。
今まで病院等で検査をしても、「頭(脳)に異常なし」、「耳にも異常なし」原因不明ですと診断されたことがある方が最もよい適応となります。
また、「目の異常」「脳の異常」「耳の異常」「固有感覚の異常」の全てが関わってめまいが発症しているので、仮に耳に異常があると診断され治療をし、症状が改善していない方も適応ということができます。

当院でのトリガーポイント治療法

頸部の筋肉である、頭板状筋、最長筋、半棘筋、中斜角筋
顔の筋肉である、咬筋、側頭筋、外側翼突筋


これらがめまいの原因筋になっている場合が多く、この筋肉に対してトリガーポイントマッサージやトリガーポイント鍼治療を行い、固有感覚の異常を改善することで、めまいの症状も改善します。

最後に危険なめまいについてご説明します

「意識障害」、「言葉の障害(ろれつがまわらない)」、「運動・歩行の障害」、「嚥下障害」、「感覚の障害(触っても分からない)」、「複視(物が2重に見える)」、「激しい頭痛」、「顔面部のしびれ」、
めまいに上記の症状を伴う場合は脳病変(脳幹梗塞等)が疑われますので、早急に脳外科への受診をお勧めいたします。

 

 

当院では、トリガーポイント治療の権威である「黒岩 共一先生」に直接指導を受けた、本物のトリガーポイント治療を行っております。
運動器の痛みでお困りの方や、何処に行っても治らない痛みでお困りの方は、是非一度トリガーポイント治療の効果を体感してください。